日本は世界でも有数の自動車大国です。実際に、有力な自動車メーカーをが数多くあり、その分自動車部品メーカーも多くいるので、非常にすそ野が広い産業となっています。

自動車業界に携わってきた自分が感じる各自動車メーカーの特徴、強み、弱みをまとめていきます。これから自動車業界に入ろうと思っている方などの参考になれば幸いです。

トヨタ自動車

会社概要

四輪自動車では世界トップクラスのシェアを誇り、国内ではシェア4割と断トツ首位となっている自動車メーカーです。国内や米国に強く、中国や東南アジア地域でも勢力を増しています。電動化開発では他社を一歩リードしており、トヨタの作った技術規格を世界標準にできるかが、今後注目されてきます。

強み

トヨタ自動車の強みはなんと言っても、その規模感にあります。自動車の技術開発には莫大なコストが掛かるため、トヨタと同じように全車格セグメントの開発、ハイブリッド、EV、FCV全方位への開発など、多方面に資金を振り分けることはできません。少なくても国内メーカーでは同じように開発できる会社はありません。

弱み

その知名度ゆえに政治問題の標的にされることがしばしばあります。近年で言えば、米国でのリコール問題やトランプ大統領から名指しでの避難、中国での日本車買い控えの標的などあります。

また、東南アジア地域などで求められる安価な小型自動車の開発は弱いと言われています。ダイハツの子会社化、スズキとの提携により、今後カバーしていくことが予想できますが、ここはトヨタの課題になっています。

日産自動車

会社概要

ルノーとアライアンスを結び、三菱自動車を傘下に加えたことで、世界首位級の規模を持つまで成長した自動車会社です。カリスマ経営者カルロスゴーン氏によって、倒産の危機から復活した日産でしたが、ゴーン氏の不正疑惑により再び窮地に陥る可能性もあります。電気自動車リーフや次世代型ハイブリッドシステム「e-POWER」などの電動化と自動運転にリソースを集中させています。

強み

歴史的に、国内でのトヨタとの競争に敗れて、早くから海外展開したこともあり中国と米国などの海外で高い競争力を持っています。系列部品メーカーについても早くから海外展開を進めたこともあり、日産系の部品メーカーはグローバル化が進んでいる特徴があります。

また、ルノーとのアライアンス、三菱自動車の子会社により、規模は業界トップ級となっています。これに伴い内部品の共用化や生産の効率化を進める方針を持っており、日産のコスト競争力がさらに強化されることが予想されます。

弱み

過去には、トヨタと同規模の系列メーカーを抱えていましたが、現在は資本関係があるのは数社まで減ってきています。こうした会社の姿勢が良い結果になるか、悪い結果になるかは分かりませんが、日産グループとして底力は低下しています。以前潰れかけた時は、サプライヤが部品価格を下げて支えたと言われていますが、今同じことが起きたらサプライヤは日産と頑張ることよりも他の自動車メーカーに近づくなどして生き残りを模索すると思います。

また、自動車開発のリソースを電気自動車と自動運転に2点に注ぎ込んでおり、様々な可能性が考えらえる将来において、ややリスクが高い経営戦略をとっていることも知っておいた方が良いです。

本田技研工業

会社概要

自動車とバイクの大手企業です。2輪は東南アジア地域、4輪は北米圏が収益の柱となっています。北米エリアは不安定な国際情勢などもあり、難しいかじ取りが求められていますが、新車効果などで着実に収益を伸ばしています。

強み

ホンダの強みはマーケティングの上手さにあります。トヨタや日産と比べて車種が少ない一方で、ヒット車となる確率はホンダの方が高いです。フィットや軽自動車での成功など、その時のユーザーのニーズを捉えて、自社のリソースを振り分ける思い切りの良さは他社にはない魅力です。

また、レーシング参入で有名になったホンダのエンジンなどで消費者に高いブランドイメージを定着することに成功しています。

弱み

逆にホンダの弱みは脆弱な組織にあります。自動車会社としてトヨタ、日産と肩を並べるBIG3となったのは最近のことです。新車立上げプロセスや組織体制などはまだまだ成熟していないところも多く、その点で原価的なロスも多くなっていることが容易に予想できます。ホンダは自前主義と言われており、トヨタや日産だと部品メーカーにやらせている領域をかなり内製化していやっています。それが強みの面もありますが、車両開発や次世代技術へリソースが割けない理由にもなっているので弱みの面の方が大きいです。

また、規模という点でトヨタ、日産と大きな差を付けられていることも弱みとなっています。次世代技術への投資額は膨大な額になるため、ホンダ単体では開発しきれなくなります。トヨタはダイハツ、スバル、マツダ、スズキと連携し、日産は三菱、ルノーと連携することで開発を加速させています。ホンダは自動運転技術ではGMと提携していますが、トヨタ、日産と比べるとまだ資金力や結束力には明らかな差がある状況となっています。

マツダ

会社概要

広島に本社を持つ中堅自動車メーカーです。国内メーカーの中では欧州に強い特徴を持っています。また、世界のEV化の流れと逆行してロータリーエンジンやディーゼルエンジン技術を追求しているところなど、かなりニッチな開発をしています。

強み

マツダにしかできない車づくりで、ニッチなユーザーから支持を獲得しています。過去にはマツダ車を買うとマツダディーラー以外からの下取りが安いのでマツダ車以外に乗り換えられなくなる「マツダ地獄」と呼ばれる現象もありました。しかし、現在では内装は高級感があり、外装はスタイリッシュ、走行性能も高いと消費者の評価はかなり上がってきています。実際に、最近のマツダ車のリセールバリューは上がってきており、マツダ地獄なんて言われたのは過去の話になっています。

弱み

マツダ車は売れていますが、思ったほど利益が出ていません。ユーザーから見てマツダ車はスペックの割に割安感があるので、実際にマツダ車の価格設定が少し安いことが原因だと考えられます。ここら辺のマーケティングの下手さは弱みです。EVや自動運転などの次世代技術の開発において、他社よりかなり遅れてしまっている点も今後の懸念点です。

また、マツダは欧州の高級車メーカーのようなポジションを目指していると考えられており、今後車のスペックを上げつつ、車両価格も引き上げてくることが予想されます。コスパの良さでマツダを選んでいた層が一気に離れてしまったときに、マツダとして耐えられるだけのブランディングができているのかは疑問が残ります。

SUBARU

会社概要

富士重工業から車のブランドであるSUBARUに社名変更をしました。米国での販売が絶好調なこともあり、爆益を出している同社ですが、足元は品質トラブルなどが多発しており、ラインがストップするなど無理な増産の副作用が出始めています。

強み

スバルと言えば、安全装置に代表されるアイサイトです。老若男女問わず、スバル車の人気をけん引しています。アイサイトによって築かれてきた安全な車というブランドイメージはスバルにとって大きなアドバンテージとなっています。

また、スバルは従来マツダと同じでニッチな層に愛される自動車メーカーでした。水平対向エンジンに代表される独自技術と、SUVやスポーツ車を得意とする車両開発でユーザーを獲得してきました。このセグメントは利ザヤも大きく、スバルにとっては稼ぎ柱と言えます。

弱み

現在、会社の経営状況は米国の売れ行きによって左右されてしまう状況になっています。為替リスクやトランプ大統領の政治的なリスクなど、高いリスクを抱えています。ちなみに、トヨタがスバルと提携したことで、経営が傾くの心配はだいぶ薄れました。

また、EV車の開発をやってこなかったので、スバル単体での開発は困難となり、おそらくトヨタに依存することになります。トヨタの参画によって、スバルの独自性が失われていくのではという懸念もあります。

三菱自動車工業

会社概要

財閥系の冠を持つ唯一の自動社メーカーです。数回のリコール隠し事件を起こして、自動車メーカーとして社会的信用を失いました。ただ、実は日本最古の自動車メーカー、電気自動車を初めて量産化したなど、歴史と伝統がある会社です。現在は、東南アジアを主戦場として展開しています。

強み

日産の傘下になる前の大株主だった三菱商事の販売網を使って、東南アジアエリアを開拓したことで、日系自動車メーカーの中では、東南アジアに強い自動車メーカーとなっています。また、早くからEV開発を手掛けてきたことで、EV技術において業界トップクラスの技術を持っています。

弱み

やはり、リコール隠しによって失墜したブランド力は、国内では回復不可能な状態になっています。品質が悪いとか以前に、不正をした車というブランドイメージになっており、国内で三菱自動車の名前を聞くことはしばらくは無いと思います。

スズキ

会社概要

名物経営者の鈴木会長が率いる自動車メーカーです。軽自動車の開発で第一人者となり、その小型車開発のノウハウ活かしてインド市場を開拓したことで、他の自動車メーカーとは違う独自の経営基盤を作ることに成功しています。

強み

軽自動車をはじめとした小型車開発の技術力がスズキの強みです。スズキと言えばインドのイメージが強くなってきていますが、国内の自動車販売も高水準で推移しており、市場にニーズに合わせた自動車開発ができています。

また、インドについては乗用車のシェアは依然50%近くを持っており、他社の追随を全く許していません。この調子でインド市場の拡大と合わせてスズキが成長していくと、国内BIG3(トヨタ、日産、ホンダ)と肩を並べる日がきてもおかしくはないと言われています。

弱み

スズキはインドのイメージで海外が強いと思いきや、インド、日本以外は全くダメという状況です。地域が絞られていてリスクが高いという課題を抱えています。また、EV車や自動運転など次世代技術の開発がかなり遅れていることもあり、益々経営リスクが高まってきています。トヨタと提携したのもその危機感からだと思われます。

ダイハツ工業

会社概要

軽自動車の市場でスズキと追い越し国内ナンバーワンの販売台数をあげる自動車メーカーです。トヨタ自動車の子会社となっており、トヨタグループの軽自動車、新興国向け小型車開発の役割を担っています。

強み

ダイハツは唯一の軽自動車専業メーカーとなっています。通常、利ザヤの少ない薄利多売の軽自動車だけだと経営が苦しくなりますが、トヨタ自動車の後ろ盾のもと経営効率化を進め、現在の形が実現しています。スズキのインド進出からも言えるように、小型車開発も安価に仕上げなければならずノウハウを必要としており、他社と比べてそこだけに集中できるダイハツの強みと言えます。

弱み

軽自動車開発以外のところはトヨタに依存しています。良くも悪くも、完全に子会社として組み込まれており、ダイハツというブランドが実質残っているだけとなっています。資本的に独立している他の自動車メーカーとは明らかに異質な存在となっています。