2016年6月23日、イギリスで行われたEU脱退の是非を問いた国民投票の結果、僅差ながら離脱派が勝利を収めたことで、イギリスのEU脱退が決定した。

このニュースは、イギリス、EUはもちろん全世界に衝撃を与え、為替市場を中心に世界の金融市場は大パニックとなりました。

当然、自動車業界へ与える影響も大きなものとなりますので、今日はEU脱退が自動車業界に与える影響を考えてみます。

 

イギリスはなぜEUを脱退するの?

そもそもの整理からしてみます。

今回の国民投票が行われたのも、国内からEU加盟に対して強い不満があったからです。

イギリスが抱えていたEUへの不信について一つずつ見ていきたいと思います。

 

①ギリシャの金融危機

ギリシャが金融危機に陥り、EU加盟国で支援をしたという話は記憶に新しいと思います。

ギリシャは労働人口の25%が公務員と言われています。そして、ギリシャの公務員は、仕事に見合わない破格の好待遇を約束されており、税収を超える支出を垂れ流していました。それをあろうことか粉飾により、国の財政収支をごまかしていたのです。

それが、2009年に明るみに出たことで一気に国の信用が低下し、資金調達コストが高騰、財政危機となりました。

この危機的状況に、EU連合は多額の支援を出し、加盟国で経済力のあるイギリスはEUに対して多額の分担金を負担しているので、結果的に自分たちのお金を怠惰なギリシャのために使われてしまいました。

これには、当然イギリスだけでなく、ドイツやフランスなど経済力のある国で不満が爆発しました。

このような形で、明らかに無駄なところへお金が流れるEUの現状に不信感を募らせていました。

 

②移民問題

EUでは域内の移動は自由にできます。EUには東欧諸国のような貧しい国も加盟しており、必然的に職を求めて経済力のあるイギリスに人が流れてきます。

特にイギリスは失業手当などが手厚い保証があり、移民から人気の地となっています。

若い労働力の流入はイギリスとしては、経済の活性化という意味で良いのですが、治安の悪化や既存の英国人労働者の仕事を奪うことになりました。

ただし、これに関しては賛否両論あります。

高齢者世代は移民の若者に仕事を奪われ、生活が困窮していたため不満に思っていたものの、逆に若者世代にとってはイギリス国外でも自由に働けるとあって好感されていました。

実際に、高齢者は離脱派、若者は残留派となった今回の選挙が物語っています。

 

③歴史的な背景

歴史的に、イギリスはフランスと仲が良くないことは良く知られています。

今の時代に戦争したりはしませんが、国民感情としては心のどこかで良くは思っていません。

EU内でもドイツは世界大戦の敗戦国として警戒されていたり、東欧諸国と西欧諸国で大きな経済格差があったりと歴史がある分、様々なしがらみがあります。

特に、海洋国であるイギリスは、ヨーロッパ本土と独立した文化を持っており、自分の文化に対するプライドが高い民族です。

こうした中で、経済だけでなく、文化や慣習にも足を踏み入れてくるEU連合を拒絶しました。

まあ、他にも不満を持っていた高齢者の投票率が多かったことや離脱派の閣僚や有名人の影響など、様々なことが考えられます。

 

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イギリスと自動車業界

イギリスは大きな自動車メーカーが無いという印象ですが、もともとは伝統ある自動車メーカーを数多く抱える自動車王国でした。

イギリスのかつて存在したオースチンは、日産自動車と1952年に技術提携しているなど、現在の自動車王国である日本よりもイギリスはるか先の技術を持っていました。

そんなイギリスの自動車メーカーですが、経営破たんや買収などで、現在はイギリス資本の会社はほとんどありません。

ただし、BMWのロールス・ロイス、インドのタタが持つジャガーとランドローバー、VWのベントレーなど、かつての栄光を持つ英国自動車メーカーが、他国の自動車メーカー傘下という形で存続しています。

買収されていったという背景なので、工場も英国内に残っています。

また、日系や米系の自動車メーカーでは、イギリスで車を生産してEU諸国に輸出しているので、数多くの工場があります。

当然のことながら物流効率などから自動車部品メーカーもイギリスに多数工場を建設しています。

このように、イギリスでは自動車産業は自国の産業として非常に重要と言えます。

 

イギリスがEU脱退で何が起こる!!

EU脱退によって懸念されるのが、関税の問題です。

通常、EUへ自動車を輸出する場合は、10%の関税がつけられますが、EU域内では関税がかからないため、現在イギリスからEUへの輸出は無税となっています。

前述した通り、日系メーカーはEU輸出のために、英国に工場を持っています。

英国内での生産数が日系で一番多い日産は、年間で約47.5万台ほどを製造しているうち、80%以上をEUへ輸出しています。トヨタは、約19万台を製造しているうち、70%以上がEUに輸出されています。さらにホンダは、約14万台ほどを製造するホンダも、50%以上がEUへの輸出となっています。

もちろん、EU脱退まで何もしなければ10%という話であって、今後イギリスはEUとFTAなどの条約を結ぶ動きをとることになります。

ただし、個人的な予想ではEU連合としてはイギリスに対して、かつてないほどに非常に厳しい対応をするのではないかと思います。

EUとしては、イギリスと自由貿易を行い自国の経済を活性化することよりも、自国の利益が多少マイナスになろうとも脱退したイギリスに制裁を加えることを重視すると思います。

背景には、EU域内でくすぶる脱退の流れを絶つことにあります。

すでに脱退を決めたイギリスとの交渉なんかよりも、EUの崩壊を阻止する方がよっぽど重要だからです。

こういう予測を前提とすると自動車メーカーとしては、イギリスの工場は規模を縮小して、他のEU加盟国のところに工場を持っていく必要が出るわけです。

そもそも経済崩壊の予兆が・・・

このような形で、自動車メーカーとしても難しい判断を迫られる状況となっています。

でも、問題はイギリスだけじゃなくて、世界に波及する可能性もあります。

というのも、そもそもこの事件が世界不況のトリガーになりかねないからです。

実際に、EU脱退の結果を受けて、円ドル相場は一時99円となりました。日系メーカーからすればイギリスにある工場をどうするかなんて問題よりも、よっぽど大問題です。

今年度、自動車メーカーの想定レートはトヨタ、日産、ホンダともに1ドル=105円としており、円高が進めば為替損による収益圧迫は避けられません。

その他自動車メーカーや部品メーカーでは1ドル=110円としている会社も存在しており、円高による収益減のインパクトは計り知れないものとなります。

仮に円高が進み減収となれば、企業の収益結果は景気減速と受け止められ、株価は暴落、円高が進み、デフレを醸成していくという不景気のスパイラルと入っていきます。

自動車メーカーからすれば、そもそも車が売れなくなっていしまいます。

イギリスのEU脱退というニュースは、決して楽観できるニュースではなく不況の入り口となり得るかもしれないニュースなのです。

 

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